暴君

誰がですかっ！！

暴君言われました。
一般常識が欠けているというのはそろそろ自覚し始めましたけど。
暴君は無いです。無いと思います。うん。

ちょーっと
使用人さんに2mぐらいの高さから落としてもらって、虚空から参上を演じてみたり。
新人の使用人さんは精神鍛えるためにいびり倒したり（母様から教わりました）
煌輝先輩へのちょーっとした八つ当たりに、二人っきりでのビル徒歩制覇にお誘いしたり。
偶然にも（強調）煌輝先輩が前衛で私が後衛なので、戦闘で放置して楽しんでみたり。

してるだけで、まだまだ手ぬるいじゃないですか！

…でも、暴君に憧れてる訳ではありませんが。
強い精神と前に突き進む力には憧れますです。

せめて、インカム無しでも話せるようになるくらいには、強くなりたいです、ね。

【とある日常】

紹介所にて貼り出されていた貼り紙。
問い合わせてみれば、街の方にあるライブハウスへの地図を渡された。
そちらの方で活動してますので、直接どうぞ、という笑顔と共に。

そもそものはじまりは、自分の『歌』だった。
母様のお気に入りの、自分の声、歌。
もっと沢山聞いて欲しくて、その為に音楽を学びたくて。
だから、そういう結社を探した。

『そこ』に辿り着いた頃には、そんな気持ちもヘタれてしまったけど。

言い方は良くないだろうが、……あまり、治安良く感じない景観と、
意識しなければ人気を感じないほどの空気に、違和感無く沈み込む、
地図の指し示した、その場所。

ばくばく煩い心臓が、二の足を踏ませる。
ぶっちゃけ帰りたい帰りたい帰りたい。
そう呟く声は、スイッチを落としてあるインカムには吸い込まれずに消える。

――……ええい、ままですっ！
いざとなればひゃくとーばん！

形が潰れるほどに抱きしめた鞄に恐怖を閉じ込め、
その勢いで、扉を押した。

ギィ、と、重い音を響かせ、厚い扉が開かれる。
途端、耳に入ったのは、

 

楽しそうな談笑と、風にも似た、『音』

 

その輪の中心にいた、鮮やかな赤メッシュの男性がこちらに気付いても、
思わずぽかんとした表情を浮かべた少女は、彼に気付かなかった。
だって、外と空気が違う。
すぐわかった。ここは明るくて、暖かい、場所だ。

「……どうしたの？」

輪から外れてやってきたその男性に、少女は我に返る。
急いでインカムのスイッチを入れ、準備してきた言葉を発した。

『あのっ、紹介所から―――』

 

その勢いを後押しした気持ちに、
ここなら大丈夫、という安堵が含まれていたのは

少女はまだ、気付いていない。